今公園に行くとカメラを持っている人が多い。携帯で写真を撮っている人を入れると、全員がカメラマンと言ってしまって良いくらいだ。
場所柄、中でも花を被写体にしている人が多い。野外で花を撮ろうとしてまず驚くのが、花はいつも揺れているということだろう。ファインダーいっぱいに入れようとしてもゆらゆら揺れて中心に座ってくれない。普段気がつかないけれど、風はいつも吹いているのだなあと実感する瞬間だ。
さて目を上に向けて、送電線の話。
高い大きな鉄塔に支えられて遠くから電気を運んでくれている送電線。見上げると電線のところどころに、団子のようなものがついているのがある。二つの卵が向き合って電線からぶら下がっているようにも見える。これは風や雪から送電線を守る為のものでダンパーと言う。目的は色々あり、それに合わせて形状も工夫してある。
雪が電線に付いていくときには一様に付くのではなく、結果として大きな方に大きな方にと付いていくので電線がぐるぐるねじられてしまうそうだ。それを防ぐためにあらかじめおもりをぶら下げておけば電線が回らない。雪国ではこのダンパーがついている。
風については、いくつかある。風が吹くと電線が揺れる。あまり揺れて隣の電線に接触したら大変なことになる。それで電線の鉄塔と鉄塔の中間部分におもりをつける。するとその付近の振れ幅が小さくなる。丁度ギターの12フレットを押さえたのと同じ状態だ。その両側が振動することになる。これによって振れ幅が小さくなる。
また風は細かい揺れも起こす。バイオリンの弦が弓でこすられて振動しているようなものだ。草笛で息の強さと葉っぱの具合が合うと強い音が出るように、風と電線の具合とが合うと強い振動が電線に起こる。こういう適当な(不適当な?)風がいつも吹いているようなところだと送電線を固定し支えている支点のところで細かい曲げが繰り返されて送電線をいためてしまう。これを防ぐために支点に近いところに設置されるダンパーもある。
先人の知恵・工夫と言うものはいろいろな分野でいたるところに活かされ残っている。普段気がつかないがそれによって我々の今の生活が成り立っているのだ。感謝。
OB・OG会のホームページからリンクが張られた現代ギター社の「ギターにやさしい管理法1、弦の交換。」で中里精一さんが弦を切る専用のカッターを紹介していた。こんなものまで作って売っているところがあるのかとびっくりした。刃先が丸まっていてギターに傷をつけないようにしてある。また二つの刃同士が円形で、刃を閉じていくと弦を包み込むようにして切って行き、弦が逃げないようにしてある。電線など丸い断面を持つものを切る為によく使われている手法だ。
今まで弦を切ることはほとんど無かった。ブリッヂにかけた弦の反対側を糸巻きに通して引張りそのまま巻いていた。だから糸巻き側に結構な長さのあまりが出ていたがそれはそのままだった。ニッパーか爪切りで切ったことはあるけれど低音弦になると結構硬いもので、刃を傷めるような気がしてそれ以上はやらなかった。
先日、物は試しと、先述のカッターを購入した。
便利、便利。
高音弦はもちろん、低音弦も気持ちよく切れる。これならばブリッヂ側で余る先の長さを気にしないで多少長めに使っておいて、余った部分を後で切りそろえるということが気楽にできる。
これから考えたこと。
今まで、弦を張る時に弦のどちら側を糸巻き側にすべきかと言う話があった。メーカーによるけれども、低音弦の片方の先端部が荒く巻いてあって、時には色もついている。これはブリッヂに巻きつけるときにやりやすいようにと言うメーカーの親切心か、いやいやこれは巻き終わりのほうなのであって巻き方の精度が悪いので糸巻き側に持っていくべし、などという話があり。どうしよう、どちらを糸巻き側に持っていこうか。巻き初めだって安定してないんじゃないの?と悩ましい部分があった。さて、このカッターを手にしたら考えが浮かんできた。弦の真ん中を使いましょうということ。どちらが糸巻き側かという話のどちらにしても、真ん中は正常だと言うのを前提にしている。そこで、ブリッヂ側で今までよりも長めに余らせて引っ掛けて、後で切りそろえればよい。そうすれば弦の一番安定したところを使えるのではないか。
これはいままで弦を切るのが大変だった頃には浮かばぬ発想だった。このカッターを手にして初めて浮かぶ考えだ(少なくとも私には)。次の弦交換のときから試してみようと思っている。
楽しみです。
もうひとつ、このカッターの使い方があった。
それは、なんと楊枝をも切ることができるのです!
しかも切断部をつぶさずに、丸いまま!
木ネジをはずしてからもう一度木ネジを締めようとすると、穴が大きくゆるくなっていて、締結の用を成さなくなることがある。木ネジが小さいときには簡便な方法として楊枝のような細い棒をその穴に打ち込んで穴を埋めてから木ネジを締めるとネジが効くようになる。このときに楊枝を穴に打ち込んだ後、余った楊枝を根元から切る必要がある。荒い作業のときなどは、薄刃ののこぎりやカッターで切ることができるけれども、大事な楽器の時にはそれらの工具を使う勇気が無かった。またニッパーなどで切ると切断部がつぶれてしまう。そこで今回のカッターの登場だ。切り口はつぶれずにまん丸だ。ネジ穴をきれいにふさいでくれる。今回は糸巻きの具合が悪くて糸巻きをはずす必要があり、丁度このカッターが役に立った。
きれいにできた。助かりました。
以上、先人の知恵に感謝の話でした。
補遺1:
今回の楊枝の使い方は簡便な方法であって、木ネジの穴を埋めるときには下地となる木と同じ材料や、楊枝よりも硬い材料が楽器としてはお勧めです。
接着剤を併用して、固まった後に錐で下穴を立ててからネジを締めましょう。このカッターで根元を切ると、刃の厚さ分だけ根元から残ってしまうので少し抜き気味にしてカットして、その後飛び出た部分を押し込んでやる必要がある。
補遺2:
紹介したカッター。
ナイロン弦専用ストリングカッター。Pick BoyブランドのSC130です。
楽器店店頭で¥1470でした。